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萩の住所の謎 ~町名は町名にあらず?

昨日、関東から萩市内に荷物を送ってもらう用が起きた。起きたというか起こしたのだが、それはさておき、電話で先方に住所を伝えることになった。
その時、筆記ならともかく電話で「椿東」という住所を伝えるのはちょっと面倒だな、と思った。「ちんとう」と読むのだが、椿という字で「チン」という音がピンとくる人が少ないからだ。
そこで、説明しやすい「新川(しんかわ)」という住所でお願いしたのだが、後で電話がかかってきて「住所が見あたらないのですが…」と言う。あぁ、そうか。今時は宅配業者が郵便番号で入力するから、郵便番号対応の住所じゃないとダメなのか。そこで結局「椿東」の字を説明して番地を告げ、さらにさきほどの新川以下の住所は不要ですと言うと先方はなんだか意味がわからない様子だったが、とにかくそう書いてもらったら大丈夫ですから、と言ってお願いした。

萩以外の人には理解しがたいと思うが、萩では1つの住所に対して「町名」と「行政区」と呼ばれる2通りの表し方がある。例えば松陰神社は

A.萩市椿東1537
B.萩市船津の1

という2通りに表せる。

江戸時代からの町印。「呉」は呉服町、椿の絵は椿町、かんざしの細工は細工町など、町の名前や特色を図案化したもの。今でも祭の時などに見られる。

地方の方ならご存じかも知れないが、昔よく使われていた「大字(おおあざ)」という区画が「町名」にあたり(A)、後ろに1~5000番台の番地をつけて表記し、詳細な場所を指し示すことができる。
これに対し「行政区」は「○○町」など町ごとの区画を示し(B)、「○区(○は数字や東西南北)」や「~の△(△は数字)」をつけておおまかなくくりで表記される。

最近は町名が使われることが多い。郵便番号が7桁になってからは、郵便番号に対応している町名を使わないと、今回の荷物の件のような不便が起こるからだと思う。現に松陰神社のサイトでもA表記が採用されているし役所の書類なども基本は町名、括弧で行政区が書かれていたりする。

幕末頃の地図。ここに見られる町の名前は、現在でも行政区名としてほぼこのまま通じる。

じゃあ、いっそのこと町名だけにしちゃえば?と思われるかも知れないが、それはそれで不便なのだ。なぜなら、昔から○○町などの町名として親しまれているのは行政区名(B)であって、町名(A)ではないのだ。なんともややこしい。
さらに「椿東(ちんとう)」とか「椿(つばき)」などは範囲が広すぎて地元民でも場所を特定するのは困難だ。例えば「萩市椿東へ行きたいのですが…」と尋ねても、「椿東のどこ?」と聞かれるに違いないし、番地を言っても多分通じない。そんなとき活躍するのが町の名前である行政区だ。「新川」と言えば「あぁ、東萩駅の周りですよ」とか、「椿町」と言われれば「天神様のへんやね」とか、すぐに教えてもらえるだろう。


で、結局現在は「両方併記する」という折衷案がとられることが多い。例えば先ほどの松陰神社なら「萩市椿東船津1537」とするのだ。正式な書き方ではないが、郵便番号にも地元での認識にも対応できる。ま、もちろん松陰神社のような有名どころは、そのものズバリ「松陰神社」で調べた方が早いことは言うまでもないが、一般に民家やお店などは、この併記方法が実に便利である。

観光などで来られた方がこれをご存知なくても別に不自由はないだろうが、案外出くわす場面もあるんじゃないかと…。まぁその程度の情報ですが、ご参考までに。

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